start of AKUNOMICHI 前編


リンアン:ri       秋月ゆえ
レオン:re     月城鏡夜
サリー:sa     雪城あゆむ

トレニア:to       KAZMA
アイリス:ai     和泉美鈴


 


re01 : これは、俺がまだ召使になる前の話。
       リンアンがまだ政治に関わっていなかった…昔々の話。

 

M01

 

sa01 : あ、レオン、こんなとこにいたー。

re02 : サリー。

sa02 : 帰らなくて良いの?

re03 : んー…ほら、今日は天気が良いからさ。外で遊びたいじゃん。

sa03 : トレニア先生待ってるんでしょ?

re04 : サリーも一緒だろ。

sa04 : えー、私、遊びたいー。

re05 : ほら、俺と一緒じゃん。

sa05 : じゃあ、レオン、サボっちゃおっか。

to01 : それじゃあ、ボクも混ぜてほしいなぁ。

re06 : げ、トレニア先生…

sa06 : あっちゃー…

to02 : やぁ、二人とも。帰りが遅いから迎えにきたよ。

re07 : 迎えにこなくて良いのに。

to03 : レオン、何か言った?

re08 : 別に…

sa07 : ねぇ、トレニア先生、今日は外でべんきょーしよーよ!

to04 : あぁ、サリー、それは良いアイディアだね。

sa08 : それじゃあ!

to05 : でも、今日はやらなきゃいけないことがあるんだって。

sa09 : え?

to06 : 今度、お城でパーティーがあるだろう?
       二人とも今年から参加できる歳だから、今日からはボクの家でマナーのお勉強です。

re09 : えー。

sa10 : つまんなーい。

to07 : はいはい、そんな顔したってお勉強はお勉強。
       じゃあ、今日も元気に張り切って死なない程度に勉強しようか。

 

M02

 

re10 : start of AKUNOMICHI
to08 : 前編

 

re11 : トレニア先生、大変、サリーがまた逃げた!

to09 : あーあ、サリーはダンスが嫌いみたいだねぇ…

re12 : そんな呑気で良いの?先生…

to10 : まぁ、嫌なことを無理強いするのはボクも気が引けちゃうからなぁ。

re13 : それじゃあ、俺も無理強いされたくないんだけど。

to11 : レオンは別。

re14 : 差別だー。男女差別だー。

to12 : 何でそういう言葉ばっかり覚えるの。

ai01 : ふふ、それ、お兄ちゃんが教えたんでしょう?

re15 : 誰?お兄ちゃん?トレニア先生の妹?

to13 : あぁ、そう言えばレオンは会ったことなかったね。

ai02 : 初めまして、レオンくん。私はアイリス。いつもお兄ちゃんがお世話になってます。

re16 : あ、いえ、こちらこそ。

to14 : ちょっと、アイリス、いつもお世話してるのはボクだよ。

ai03 : うっそだー。お兄ちゃん、いっつも迷惑かけてるでしょ?

re17 : あ、はい。そりゃ、もう。

to15 : ちょっとレオン、そんなハッキリ本当のこと言わないでよ。

ai04 : お兄ちゃん、自分で認めちゃったらダメじゃない…

to16 : あ、それよりアイリス、今日は、お城でのお仕事は良いのかい?

ai05 : ええ。

re18 : お城でのお仕事?

ai06 : あ、私、お城で王族専属の看護師してるの。

re19 : へぇ、先生って凄い妹いたんだー…

to17 : レオン、それ、ボクが凄くない、みたいな言い方。

re20 : だって、先生、いつも変な研究してるじゃん。

to18 : あのねぇ、ボクだって、頭良いんだからね。
       だから、こうやって上流階級の家庭教師やってるんだし。

re21 : あぁ、はいはい、そーですねー。

to19 : 投げやりだなぁ…

ai07 : あ、お兄ちゃん、これ、お薬。帰りに買ってきたわ。

to20 : あぁ、ありがとう、アイリス。

re22 : そうだ、トレニア先生、身体悪いんだから、今日はこの辺にして、薬飲んで寝た方が良いよ!!

to21 : レオン…サボりたいだけだろう?

re23 : …別に…

to22 : 全く、レオンもサリーも二人とも、パーティーは明後日だっていうのに…

re24 : 参加しても踊らなければ良いだけでしょう?

to23 : それ言われちゃうとボク、先生として教えることなくなっちゃうんだけどなぁ…

ai08 : 相変わらず先生として見られてないのね、お兄ちゃん。
       そうだ、レオンくん。美味しいお菓子でも作るわ。ゆっくりして行ってね。

re25 : お菓子!!

to24 : それじゃあ、サリーも呼んでこよう。あの子もお菓子好きだし。

re26 : でも、先生、サリー、どこ行ったか分からないよ?

to25 : 大丈夫。(大きく息を吸って)サリー!!おやつの時間だよー!!

 

SE01  足音

 

sa11:おやつ!!

to26 : ほらね?

re27 : (溜息を吐いて)サリー、お菓子ばっかり食べてたら太るぞ…

ai09 : ふふ、お兄ちゃん、可愛い生徒達ね。それじゃあ、すぐに作るわ。

 

M03

SE02  城内の音(パーティー)

 

sa12 : ねぇ、レオン。

re28 : 何、サリー?

sa13 : 暇ね。

re29 : 暇だな。

sa14 : ねぇ、レオン。

re30 : 何、サリー?

sa15 : 抜け出しちゃダメかな?

re31 : 偶然。俺も今、それ思ってた。

sa16 : それじゃあ…

re32 : 逃げるか…!

to27 : はい、ストップ、ストーップ。

re33 : げ、トレニア先生…

sa17 : あっちゃー…

re34 : 何でいつもいつも後ろにいんの!?

to28 : 何でいつもいつも逃げようとするの?

sa18 : だって、トレニア先生、とっても暇なんですもの。

to29 : それは分かるけど、逃げちゃダメでしょ。

re35 : でも、面倒だよ、先生。こんなどこ見ても大人だらけのパーティーなんて。

sa19 : もっと遊びたいわ。

to30 : 美味しい料理がたくさんあるよ、サリー。

sa20 : 私、あんなのよりママの作る料理の方が好き。

re36 : ねぇ、トレニア先生、どうして大人はパーティーばっかりするの?

to31 : あぁ、良い質問だね、レオン。それはね、大人はご挨拶が大好きだからだよ。

re37 : ご挨拶?

to32 : そう。こうやって、偉い人同士がご挨拶して、偉い人同士で仲良くするのがパーティーの目的なんだよ。

re38 : 意味分かんない。

to33 : だろうね。正直、ボクにも意味分からないから。

sa21 : 先生にも分からないの?

to34 : ボクは偉い人には興味ないから。

re39 : ふーん…で、その偉い人同士のご挨拶パーティーにどうして俺らが来なきゃいけないの?

to35 : それはね…二人ともその偉い人がご両親だからだよ。

sa22 : パパとママ?

to36 : そう。レオンとサリーのご両親はこの国をまとめているとっても偉い人の一人なんだよ。

re40 : ますます面倒くさいね。俺は俺なのに…

sa23 : あ、ねぇねぇ、レオン、あそこ。

re41 : 何、サリー?

sa24 : ほら、あそこに私達と同じ子どもが…

to37 : あ、あれは…

sa25 : トレニア先生、知ってる子?

to38 : あぁ、あの子は…

re42 : あ、どっか行っちゃった。

sa26 : 中庭かな?

re43 : あの子もパーティー嫌いなんじゃない?

sa27 : それじゃあ、声かけてみようよ!お友達になれるかも!

re44 : あ、良いね、ちょうど暇だったし。

sa28 : よし、行きましょう!!

to39 : あ、ちょっと、二人とも、あの子は…!……行っちゃった……まぁ、いっかー。

 

SE03  中庭

 

re45 : あれ、こっちの方に来たと思ったのに…

sa29 : いないねー。

re46 : どこ行っちゃったんだろ…

sa30 : あ、レオン、あそこ、あそこ。

re47 : え?

ri01 : 暇、暇、暇、暇…どうして私がこんなつまんないことしなきゃいけないのよ。部屋で本読む方がまだましだわ。

sa31 : みーつけた!

ri02 : きゃっ、な、何?だ、誰?

sa32 : あ、ゴメンなさい、驚かすつもりはなかったんだけど…ねぇ、あなたも偉い人の子どもなの?

ri03 : は?

sa33 : 私はサリー!こっちがレオン。って…あれ?

re48 : ……君…

ri04 : あなた…

re49 : おれ?

ri05 : わたし?

 

 

sa34 : ほんっとーに似てるわー、二人とも。髪の色も目の色も一緒。あ、身長も同じくらいじゃない?

re50 : 俺も驚いた…

sa35 : ねぇねぇ、もしかして、キョウダイとか?

re51 : まさか。俺にキョウダイがいるなんて聞いたことないよ。

sa36 : だよねー。

re52 : あ、俺はレオン。

ri06 : どこの家の人なのかしら?

re53 : え?あ、サウンド家だよ。レオン=サウンドが俺の名前。

ri07 : あぁ、サウンド家。知ってるわ。お母様からよく聞いてる名前よ。

re54 : そーなの?俺の家って有名なんだ…

sa37 : ねぇ、あなたのお名前は?

ri08 : あ、私としたことが…申し遅れたわね。私(わたくし)はリンアン。
       リンアン=ミラー=アシュビッツよ。

re55 : …え…

sa38 : 嘘…

re56 : アシュビッツ…?

sa39 : わ、わ、どうしよう、レオン!私達、とんでもない人に話しかけちゃった…!

ri09 : ……やっぱり…そうよね…(ぼそり、と寂しげに呟く程度で)

re57 : この国の第一王女!

sa40 : 凄い、凄い!私、王族の人と会うの初めて!わぁ、握手して!握手!

ri10 : え…?

sa41 : 私のことはサリーって呼んでくれて良いから、友達になりましょう!

re58 : ちょ、ちょっと、サリー!

sa42 : あ、ごめんなさい!私ったら、王女に会えたもんだから嬉しくて…
       そうよね、王女が私なんかと友達なんていけないことだよね…

ri11 : サ、リー…

re59 : 全く、サリーはいつもそうやってすぐに思ったこと口にするんだから…

ri12 : 良いわよ…

sa43 : え?

ri13 : サリー、私のお友達になりなさい。

sa44 : え、良いの?

ri14 : 私、同じ年くらいの友達なんていないの。だから、嬉しいわ。

sa45 : わーい!やったぁ!

ri15 : こんなに真っすぐお友達になって、って言われたのも初めて…

sa46 : ねぇねぇ、王女、いつも王女はどこで遊んでいるんですか?

ri16 : いつも…お部屋でお勉強しかしてないわ。

sa47 : もったいない!!ね、レオン!!

re60 : え、あ、あぁ、…

sa48 : 私達、いつも町はずれの丘で遊んでるの。王女も来ません?

ri17 : 丘…でも、お母様が許してくれないわ。

sa49 : 抜け出しちゃえば良いんですよ!私達もよく家庭教師のセンセイから逃げてるし。

re61 : サリー、俺らと王女じゃ立場が…

sa50 : あぁ、堅い堅い!そんなんだからへたれって言われるのよ!!

re62 : んなっ!へ、へたれじゃない!っていうか、へたれとか関係ないだろ!

sa51 : へーたーれー。

ri18 : へーたーれー。

re63 : えぇ!王女まで?!

ri19 : ぷっ、くすくすくす、面白いわね、二人とも。

sa52 : あはは、王女も面白いー。

to40 : おーい、レオ―ン、サリー!

re64 : あ、トレニア先生の声。

ri20 : トレニア先生?

sa53 : さっき言った家庭教師のセンセイですよ、王女。

ri21 : へぇ…面白いの?

re65 : まぁ、面白いって言うか…変?

sa54 : 偉い学者さんらしーんだけど、変なことばっかりベンキョ―してるから、変人なんだって。

ri22 : ふーん…

to41 : あ、いたいた、二人とも、そろそろ帰るよ。

sa55 : え、もう?

to42 : あれ、さっきまで早く帰りたがってたのに…

sa56 : だって王女ともっとお話したいんだもん。

to43 : 王女、初めまして。二人のセンセイです。

ri23 : トレニア先生ね。お話は伺ったわ。リンアン=ミラー=アシュビッツよ。

to44 : お目にかかれて光栄です。

ri24 : あら、それはありがとう。

to45 : さ、二人とも、こうやって王女に会うためにもこれからはちゃんとパーティーに来ようね。
       駄々こねずに。

sa57 : はーい。

to46 : 王女、それでは、これで失礼いたします。
       先ほど、女王様が王女を探しておいででしたよ。

ri25 : お母様が…そう、それじゃあ私も戻るわ。

to47 : あ、そうだ、王女。

ri26 : え?

to48 : お城から抜け出すなら上手に、ですよ。

ri27 : ふふ、そうね。気をつけるわ。

 

SE04  去って行く足音

 

re66 : 先生、あんなこと言って良かったの?

to49 : そんな話をしてたんじゃないの?

sa58 : 先生ってたまに鋭いよね。

re67 : いつも変なのに。

to50 : ひどっ、それ、酷いよ、二人とも。

sa59 : さー、帰ろう、先生。

re68 : ほら、遅いよ、先生。

to51 : ちょっと、待ってよ、二人とも!


 

M04

 


re69 : 似てる、似すぎてる。そう思った。それが第一印象。
       でも、思いもしなかった。俺と彼女が深いつながりがあったなんて。
       それが運命なのか必然なのかは知らないけれど、俺は後にこの出会いに感謝すると思う。
       漠然と、そんなことを思ったんだ。
       ただ、漠然と…王女のことが忘れられなかった。

ri28 : 一体、あの子は誰…?
       私に似てた。彼は一体……
       サウンド。彼はそう言ってた。レオン=サウンド。それが彼の名前。
       会ったことなんてない。見たこともない男の子。
       なのに、何となく、ただ、何となく、知っている気がしたの。
       きっとずっとずっと昔、私達は会ったことがある…そんな、不思議な感じ…

re70 : 同じ時代…

ri29 : 同じ場所…

re71 : 同じ髪色…

ri30 : 同じ目の色…

re72 : 同じ身長…

ri31 : ただ、違うのは…

re73 : 俺はサウンド。

ri32 : 私はアシュビッツ。

re74 : ねぇ、本当に、君は…

ri33 : ねぇ、本当に、あなたは…

re75 : おれじゃないの?

ri34 : わたしじゃないの?

re76 : 不思議な不思議な関係。

ri35 : 不思議な不思議な感じ。

re77 : 王女、

ri36 : レオン、

re78 : また、会えるかな…

ri37 : また、会えるかしら…

 

M05  ENDING